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【統計一口メモ 第36話】Mantel Haenszel検定とは?


名古屋市立大学大学院医学研究科 非常勤講師 薬学博士 松本一彦

2x2分割表の検定は、2項目の質的データにおける関連性、あるいは2群の比率の差をみるものとして広く用いられている検定手法で、本一口メモにおいても第7話に載せています。

今回とりあげるMantel Heanszel(マンテル・ヘンツェル)検定は、その2x2分割表の応用編で、論文でもよく見られる手法です。ここでは福富論文1)のデータを基に解説します。

§1.2x2分割表、χ2検定

表1のような薬剤と効果の2x2分割表でχ2検定では、p値は0.744で被験薬の効果は みられないという結果になりました。

表1

本試験の担当者は自分の仮説と異なる結果に満足していません。そこで、年齢による層別解析を試みました。その結果が表2と3です。

表2

表3

60歳前後で層別した結果、60歳以上でp値が0.087と小さくなったものの、0.05以下にはなりません。やはり、被験薬は効果がみられないのでしょうか?(※ボクのつぶやき:60歳以上の被験薬投与数が20例と低すぎたせいでp値が0.087となったのかも)。

§2.Mantel Haenszel検定

表1の総数での解析は、単に表2と3の数値を重ね合わせただけ。そして、層別した表2と3はn数が少なくなるという弊害がでます。そこで、このような弊害を除くための工夫をしたのがMantel Haenszel検定です。まず、χ2検定式は次のようになります。

表4 2x2分割表

この式は通常みられるχ2式と違うところは、nがn-1となっています。なお、イエーツの修正は行っていません。本式の分子分母をn2(n-1)で割り、p=n.1/n, q=1-pとおいて書き直すと

ここで確率変数は周辺度数が固定しているので、4つのセルの1つが決まれば、他の値も決まります。そこで、ここではn11を確率変数xとすると式は次のようになります。

「両群間に差はみとめられない」という帰無仮説の下では、xの期待値はpn1.、分散は

pqn1.n2./(n-1)となることが知られています(超幾何分布)。

xを基準化(平均を引いて標準偏差で割る)したものが近似的に標準正規分布に従うことから、その2乗が自由度1のχ2分布にしたがいます。

ここで、表1の総数のように表2と3の60歳前後を単に重ね合わせるのではなく、これらの観測値が同一方向を示すのであれば(関連の向きが同じ)、これらの和Σxiはその傾向をより明確に示すことになります。各階層の観察結果は独立であるので、Σxiは近似的に期待値がΣpini.1, 分散がΣpqini.1/(ni-1)の正規分布に従い、次式は自由度1のχ2分布に従います。

これがMantel Haenszelの統計量です。

実測値をあてはめてみると次のようになります。

’p1=n.1/n1=90/250=0.36 , p2=n.2/n2= 88/140 =0.628 ‘q1=1-p1=1-0.36=0.64,
q2=1-p2=1-0.628=0.372

となり、χ2値が4.96、p=0.026で有意になります。

関連の向きが同じであればMantel Haenszel検定の検出力は大きくなります。

§3.関連の向き

「関連の向き」が同じであることが合併の条件になっています。その「関連の向き」とは各2x2分割表の数値を%に変換して、その割合が同じ傾向を示すということです。

表6の60歳未満の場合は薬剤有&効果有が40%、薬剤無&効果有=30%と下降向にあり表7の60歳以上の場合も薬剤有&効果有が80%、薬剤無&効果有=60%と同じ向きとなります。一方、表8の場合は、薬剤有&効果有が33%、薬剤無&効果有=50%で上昇傾向を示して、向きが逆になっています。

「関連の向き」が同じ場合と逆向きの場合でMantel Haenszel検定の結果がどうなるのかをみてみましょう。

1.向きが同じ場合

有有40% > 無有30%

有有80% > 無有60%

χ2値が4.96、p=0.026で有意

2.向きが逆の場合

有有40% > 無有30%

有有60% < 無有80%

χ2値が0.35、p=0.55で有意でない。

同じ値でも向きが逆な場合は有意でなくなりますが、それは妥当な結果といえるでしょう。

このように、向きが逆の場合には予想通りχ2値は低値になり有意差もなくなりました。

したがって、層別のある2x2分割表では、まず60歳未満、60歳以上のように階層別で検定し、さらに関連の向きが同じならば、Mantel Haenszel検定を実施し総合的に判断することが必要です。

Heanszelk検定

Mantel Heanszelk検定に関して、通常みられる2x2分割表での解析に加えて、Cox・Mantel Haenszelとして 生存時間分析で使われたり2)、同じようにログランク検定との関連をCox-Mantel検定として紹介している教科書3)もあります。また、臨床的にはケース・コントロールスタディーの中で交絡因子をあらかじめ制御するために、性、年齢、体重、入院時期などをマッチング(対応)させて「対応のある場合のオッズ比」として使用する方法も4)、同じように交絡因子の防止法・対処法として使用するMantel Heanszelk検定について詳しく紹介している教科書4)もあります。

  • 1)福富和夫「マンテル・ヘンツェルの検定」日循協誌24(2) 104-105,1989
  • 2)松原 望 改訂版「統計の考え方」 放送大学教材 2000年
  • 3)佐久間 昭 「医学統計Q&A」金原出版 1994年
  • 4)丹後俊郎 「医学への統計学」 朝倉書店 2013年